LOADING...

【取材記事】耕作放棄地で自然栽培!田舎にこそ必要な人の手

主催:渡辺吉一
応援市民:ー

今回は、なべちゃん農場の代表・渡辺吉一さんにお話を伺いました。渡辺さんは富山県南砺市内の耕作放棄地を使って、完全無農薬でお米を生産していらっしゃいます。その一方で、農業体験したい方を受け入れたり、農業を始めたい方や移住を検討している方の相談なども受けているとのこと。地域で人を受け入れる側にいる渡辺さんはどんなことを考えていらっしゃるのでしょうか。

<プロフィール>
渡辺吉一
富山県南砺市(旧福光町)出身。太美山地域で、定年後から無農薬栽培を本格的に始める。移住検討者などの農業体験の受け入れを積極的に行っている。

耕作放棄地は自然栽培に適している

―――定年後に無農薬でお米を作り始められたんですよね。

元々はJAに勤めてたんですが、除草剤が原因で色んな虫たちがいなくなっていることを知って、農薬を使うことに疑問を持ち、15年程前に自宅用の米を無農薬に。定年になったら、更に面積を広げ無農薬の田んぼを始めようと決めていました。今から5年前には、勤めながら、自然栽培を教えてくれる塾に通って身につけました。

―――渡辺さんの田んぼに農業体験に来られる方はどんな方が多いですか?

東京や大阪など、県外の人が多いですね。「無農薬」というところに興味を持って、アレルギーを持ったお子さんがいるご家族や、自分の体に取り入れるものは自分で作りたいという意識を持っている方などが来ています。農薬を使うことで生き物も育たなくなる環境を作りながら、出来上がるお米を食べるっていうのはおかしいよねっていう考え方に、最近は都会の人から興味を持ち始めているんです。これは今、耕作放棄地が増えている地域にとって、農業を守っていくチャンスだなと感じますね。

―――耕作放棄地が増えているんですね。

年々増えていて、私が住んでいるとなりの集落では、もう田んぼをやる方がいらっしゃらなくなりました。耕作放棄地は山に近い集落からどんどん増えています。というのも、山のそばは傾斜がついた土地に田んぼがあるので、草刈りが大変だったして、なかなか新しく稲作を始めようという人にも選ばれません。でも、もしこのまま耕作放棄地が増えていくと、山からイノシシなどの獣がおりてきやすくなったり、大きな雨が降った際に崩れやすくなって、平地にも影響が出てきます。人の手を入れ続けるということは、とても大切なことなんです。

―――耕作放棄地が増えることは、関係ないように感じていても平地に住む人にも影響していくんですね。この場所で農業をすることの良さはありますか?

逆から捉えると、私が耕作している田んぼの周りに農薬がまかれている田んぼがなく、無農薬で農業をやりやすい環境とも言えます。それと、水はとてもきれいですね。農作業中、喉が乾いたら、川の水を飲んでいるんですが、これまで一度もお腹を壊したことないですよ(笑)。田んぼで使う水は、その川から引いてるわけです。平地では、他の田んぼで使った水が排水されて川に戻り、その水をまた他の田んぼが引いて使っている。だから、自分の田んぼでは農薬を使わなくても、他の田んぼで使われた農薬が水とともに入ってきてしまうんです。

―――山のそばであればあるほど、誰も使っていない水を使えて、完全無農薬での栽培が叶えられるんですね。

そういうことを大切にしてやっているところに、魅力を感じた人にぜひ体験しに来てほしいと思っています。何回も来ていただいたり、体験後も連絡をくれたりする方もいて、それがすごく嬉しいです。そうやって来てくれた人が、また広告塔となって、この地域ではこんなことをやっているよ、と他の人にも伝わっていってほしいなと思います。

人を率先して受け入れることで地域の活性化を支える

―――渡辺さんが県外などから来られる方を受け入れるモチベーションはなんでしょうか。

それは、他に農業をしてくれる人を見つけたいという目標があるから。最近は、地域へ外からの人に来てもらうには、その地域自体に元気がないといけないなと感じています。だから、地域が元気になるような仕掛けができないかな、とも考えています。そうなって、もし地域に興味を持つ人が出てきた時に、受け入れる体制がないという状況だと、なかなか地域に入っていくのって難しいんです。例えば、移住してきたい、空き家に住みたいと思っても、田舎では個人が直接やり取りしていることが多くて、不動産屋さんもおらず、誰に聞いたら空き家について教えてもらえるかがわからない。私も今、空き家サポーターとして、そういう時のお手伝いもしているんです。そういう風に、困りごとを聞いて、相談できる人を紹介したり、一緒に行ったりと、サポートできる人がすごく大切だと思っています。


移住者や農業体験に来た人に対して、お客さんとしてのおもてなしではなく、すぐに地域の人と混ざっていけるようにサポートしてくださる渡辺さんの頼もしさをひしひし感じながら、お話を伺っていました。地域との橋渡しをしてくださる渡辺さんのような存在が、人の集まる地域になる鍵であること間違いなしです。